万年筆ばなし
SF作家の大家、星新一先生が万年筆について述べられた話しです。
“心に残る実話があった。外国の軍隊がある町に乗り
込んで来たのである。司令官が市長と会見というこ
とになる。部下を従え、ものものしく現れた司令
官、席に着くとともに腰の拳銃を机上に出す。癖な
のか演出なのかは分からないが、威圧感を高めるこ
とは確かである。すると、それに応ずるかのよう
に、市長は微笑みながら、背広のポケットから万年
筆を出し、同じようにテーブルの上に置いた......。
武器は限られた時間と空間にしか、その力は及ばな
い。これに反して、ペンは過去の人物を再現するこ
とも出来れば、未来を描くこともできる。私達の今
日の生活は筆記具の先によって築かれたとも言え
る。 (中略)
神聖なものがみるみる減っていく現代ではあるが、
だからこそ、万年筆の形だけは万年筆だけであって
欲しいのである。”
なんとも、胸に刺さります。ペンは過去も未来をも
創る。今というのは筆記具の先によって創られた。
素晴らしい言葉です。
筆記用具は大切にしなさい。決して粗末に扱っては
なりませんと、昔お母様に叱られたことを思い出し
ました。どうして筆記用具が大切なのかが、良く分
かります。
ちなみに星先生の愛用のペンは、透明なインク窓付
きの モンブラン だそうです。