ベェーベェー通信

 とある牧場のとある羊の書く日記。

音に呼ばれて......

 サン=テグジュペリの名著「星の王子様」は大人になった今も深い感慨を覚えるところがあります。

 大人も昔は こども だった......

 だからこそ、子ども時代の、今は忘れてしまった大切なもの を思い出させてくれるようで、でも、大人は こども には戻れない。切なくて、思いで胸があふれてしまうのです。

 

 

 あのバラは、たった一輪でも、キミたち全員よりも重要なんだ。
なぜなら、ボクが、水をやったり、ついたてを立てたり、ガラスの器をかぶせたりして世話をしたからだ。
ボクは、あのバラのために、毛虫だってやっつけてあげたんだ――二、三匹は、蝶々にするために残しておいたけど。
不平不満だって聞いてあげたし、自慢するのにだって付き合ってあげた。
バラが、黙りこくっても、我慢してそばにいてあげた。
だって、ボクのバラだからね。

 

 

 私は昔、ある美しいメロディと出会いました。それはそれはもう素晴らしいもので、初めて聴いた時には涙が溢れたのを覚えています。

 余りにも感動したので、このメロディは聴くことでさえ惜しいと思い、何か特別なことがあった時にだけ聴こうと思い、そっとしまっておいたのです。

 半年ほどしてあの感動をと聴いてみたところ、美しいとは思ったものの、感動こそしなかったのです。

 そこで、なぜこのメロディがこんなものになってしまったのだろう、と考えている内に ふと上のことばを思い出したのです。

 そして、なぜ大切なメロディでは無くなってしまったのかが分かりました。

 そっとしまって置いただけで、何度か聴くようなことはせず、私のメロディでは無くなってしまったからです。

 大切にすることの意味を違えていたのです。それからと言うもの、聴きたくなったらそのメロディを聴き、心の流れに逆らわないことにしたのです。

 今ではすっかり、私というものを作るかけがえの無いものとなりました。