Wiki落語「子ほめ」
隠居の所へやってきた八五郎。入ってくるなり、『只の酒飲ませろ!!』と言って隠居を仰天させた。実を言うと、これは『只(タダ)の酒』ではなく『灘の酒』の聞き間違いであったのだが、八五郎の態度に隠居は呆れ、『口が悪いと損をするぞ』と忠告した。
隠居は、『損をしたくなかったら言葉遣いを直せ』と八五郎にアドバイス。道で知人に出会ったら、相手に年齢を尋ねて相手が答えたらそれより若く見えるとおだてたりすれば一杯ぐらいおごってもらえるんじゃないか。例えば、50近くなら『如何見ても厄そこそこ』と言えば、男の厄年は41歳から43歳までなので都合10歳は若く見られたと相手は喜ぶと言うわけなのだ。
しかし、そう都合よく年配ばかりが通りかかるとも限らない。たまたま、仲間の竹に赤ん坊が生まれたので、祝いに行けば酒をおごってもらえると算段した八五郎は赤ん坊のほめ方はどうすればいいか質問をした。それに対し、隠居は『顔をよく見て人相を褒め、親を喜ばせばいいんだ』とアドバイス。
「例えば、これはあなた様のお子さまでございますか。あなたのおじいさまに似てご長命の相でいらっしゃる。栴檀(せんだん)は双葉(ふたば)より芳しく、蛇は寸にしてその気を表すと言います。私も早く、こんなお子さまにあやかりたい』とでも言えば良いんだ。」
これで完璧。喜んで町に出ると、顔見知りの伊勢屋の番頭に会ったから早速おごって貰おうと声をかけた。しかし、『町内の色男』と逆に褒められご馳走をさせられそうになってしまった。気を取り直して歳を訊くと、何と相手は四十歳。無理やり四十五歳だと言ってもらい、いくつに見えると質問されて『厄そこそこ』。
完璧に失敗し、逃げ出した八五郎は今度こそおごってもらおうと竹の所を訪れた。しかし、いざ褒める段になって台詞がまったくでてこない。
「おじいさまに長命丸飲ませましたな。洗濯は一晩では乾かず、ジャワスマトラは南方だ」
最後の手段で年を尋ねると、竹が『(数え年で)一つ』と言うので、『一つにしちゃあ大変お若い、どう見てもタダだ』。